
相続対策は節税対策ではない
相続財産を残して亡くなった被相続人から、財産を受け継いだ相続人にかかってくるのが「相続税」です。
相続税の計算は「課税価格計算」「各人の算出税額の計算」「各人の納付税額の計算」の3段階に分けて行われます。(図33)
たとえ相続税の試算をする場合でも、「遺産の総額」「遺された借金の額」「相続人数」などの条件が定まらない限り計算できません。
相続人が受け継ぐ財産とは、現金や預貯金、土地や建物、家財道具などの目に見える財産や、借地権や借家権などといった目に見えない権利もあることは述べましたが、相続税のかかる財産とは、このような金銭的価値のあるもの全てをさし、相続税の課税対象は有形・無形を問いません。さらに、一定額以上の生命保険金や死亡退職金のような「みなし財産」など、亡くなった人が所有していた財産も、税法上はみなし相続財産とされ課税されます。(図32)
これらお金に換算できる財産など、亡くなった人が遺したもののすべてを「遺産総額」と呼びますが、「課税価格計算」はこの遺産総額からまず非課税財産を除外し、そのうえで課税対象となる財産についての価格を算定(評価)して、そこから被相続人の遺した借金などの債務と葬式にかかる費用を控除したものとして「正味の遺産額」の計算をします。
その際、被相続人から相続の開始前3年以内に贈与を受けた財産がいくらかでもあれば、その財産の価格を正味の遺産額に加算します。
このようにして正味の遺産額の計算ができたら、ここから相続税の基礎控除(5,000万+1,000万×法定相続人の数)を差し引いて課税遺産額を求めます。さらに、相続人の中に養子がいる場合には、相続税上認められる養子の数も入れて基礎控除の額を計算することとなります。
ここで課税遺産総額がマイナスになれば相続税はかかってきませんので、以後の計算も必要となくなります。
次に「各人の算出税額の計算」として、これを実際の分配(相続)にかかわらず、相続税の基礎控除の計算の際に法定相続人に数えられた人が法定相続分で分配を受けたものとして、その相続人各人の取得金額を算出し、これに相続税の税率をかけて各人ごとの相続税を計算します。
これが「相続税の総額」と呼ばれるものです。
最後の「各人の納付税額の計算」は、実際に支払う税額の計算として、どのように配分(相続)したかによって、先の相続税の総額をその配分を受けた遺産額の比(割合)であん分し、相続人各人が実際に負担すべき相続税を計算します。
このようにして計算された各人の税額から、最後に「贈与税額控除」「配偶者の税額軽減」「未
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